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日本酒に使われる「醸造アルコール」とは?その正体と必要な理由を解説


米、米麹、水というシンプルな材料から造られる日本酒。しかし中には、「醸造アルコール」が添加されているものもあります。添加というとあまり良くないイメージを持つ方も多いかもしれませんが、醸造アルコールは日本酒のおいしさをつくる重要な役割を果たします。今回は、醸造アルコールとはどういうものなのか、その働きや醸造アルコールが含まれる日本酒についてご紹介します。

 

醸造アルコールとは

醸造アルコールとは、食用に用いられるアルコールを指します。国税庁では、「でんぷん質物又は含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコールをいうものとする」と定められています。主にサトウキビやトウモロコシ、サツマイモなど植物由来のものを原料とし、これらを発酵させて、アルコール分45度を超えるまで蒸留します。

基本的には無味無臭で、原材料のサトウキビやサツマイモなどの味わいや香りはほとんどありません。クリアな味わいで、日本酒本来の味わいを邪魔することなく添加できます。

日本の酒造りでアルコール添加が始まった歴史は古く、江戸時代にまで遡ると言われています。江戸時代には産業としての酒造りが盛んになり、酒の品質を安定させ、腐敗を防ぐことが必要になりました。そこで品質管理のため、アルコール添加が始まったとされています。当時は酒粕からつくられた粕取焼酎や、本格焼酎などが使われていました。

 

醸造アルコールの働き

では、醸造アルコールを添加することで、どのような働きがあるのでしょうか。

醸造アルコールには、日本酒に含まれる糖分や酸による雑味の部分を抑える効果があります。そのため醸造アルコールを添加した日本酒は、すっきりとした飲み口で、軽快で爽やかな味わいになります。またアルコール分30%ほどの醸造アルコールを加えているため、日本酒度が高くなり、いわゆる辛口の日本酒になる傾向があります。しかしほかの要素とのバランスもあるため、日本酒度が高くても辛く感じない日本酒もあります。

吟醸酒や大吟醸酒などには、華やかでフルーティーな「吟醸香」と呼ばれる香りがあります。吟醸香を構成する成分は、アルコールには溶けるものの水には溶けない性質があります。高濃度の醸造アルコールを加えることで、香りの成分をお酒に溶け込ませ、日本酒の吟醸香がより引き立ちます。このように醸造アルコールには日本酒の味わいを変化させるさまざまな働きがあるため、日本酒に個性を出すために使われることも多いようです。

また、雑菌やカビなどの繁殖を防ぐ働きもあります。香りや味を劣化させる特殊な乳酸菌「火落ち菌」の繁殖を防止し、劣化を防いで長期間の保存が可能になります。

 

醸造アルコールが含まれる日本酒

醸造アルコールが含まれる日本酒には、下記のような種類があります。

  • ・本醸造酒
  • ・吟醸酒、大吟醸酒
  • ・普通酒

米、米麹、醸造アルコールで造られたお酒のうち、精米歩合70%以下のものは「本醸造酒」、60%以下のものは「吟醸酒」、50%以下のものは「大吟醸酒」に分類されます。

本醸造酒は、スッキリとしたキレのある味わいと軽快な飲み心地が特徴です。クセが少ないため、さまざまな料理と合わせて楽しめます。

吟醸酒や大吟醸酒は、華やかでフルーティーな吟醸香と、淡麗でなめらかな味わいが魅力です。雑味が少なく、日本酒初心者の方にもおすすめの日本酒です。

「純米酒かどうか」「原料の米をどのくらい削っているか」など所定の要件を満たした日本酒を、「特定名称酒」と呼びます。特定名称酒に分類されない日本酒が「普通酒」です。普通酒には、醸造アルコールが含まれていることが多いです。毎日飲んでも飽きがこない軽い味わいで、価格もリーズナブルなものが多く気軽に楽しめます。

 

日本酒の味わいをつくる醸造アルコール

今回は、醸造アルコールとはどういうものなのか、その働きや醸造アルコールが含まれる日本酒についてご紹介しました。醸造アルコールは、品質を安定させるだけでなく、日本酒の味わいを左右する重要な役割を担っています。