同じ醸造酒として、よく比べられがちな日本酒とワイン。日本酒はお米、ワインはぶどうと原料から大きな違いがありますが、実は意外な共通点もあるんです。そこで今回は、日本酒とワインの違い、共通点についてご紹介します。
日本酒とワインの違い
日本酒とワインには、大きく分けて以下の4つの違いがあります。
- ・原料の違い
- ・醸造方法の違い
- ・アルコール度数の違い
- ・飲み方の違い
それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
原料の違い
日本酒は米と米麹と水、ワインはぶどうを原料として造られます。厳密にはワインはブドウ以外の原料を利用できず、シナモンやリキュールなどが入ったものは「混成酒」として分類されます。ぶどう以外の果物で造った「フルーツワイン」と呼ばれる醸造酒もあります。りんご、もも、さくらんぼ、いちご、キウイなどバリエーション豊富です。フランスではりんごから造られる「シードル」という醸造酒が古くから愛されています。
醸造方法の違い
日本酒もワインも原料をアルコール発酵させて造るところは同じですが、その過程には大きな違いがあります。
アルコール発酵をするには、糖分を酵母の働きによりアルコールと二酸化炭素に分解します。しかし日本酒の原料である米には糖分が含まれていないため、そのままではアルコール発酵できません。そこでまず麹菌を用いて米に含まれるデンプンを「糖化」させ、酵母の力を利用してアルコール発酵します。このように一度糖化させてから発酵させることを「複発酵」と呼ばれます。日本酒の場合は、糖化とアルコール発酵が同時に行われていることから「並行複発酵」です。
ワインの場合は、原料のぶどうのみでアルコール発酵が可能です。ぶどうにはブドウ糖や果糖などの単糖が多く含まれており、さらにぶどうの皮には酵母がついています。そのまま使っても発酵をさせられるため「単発酵」と呼ばれます。
アルコール度数の違い
種類によって差はありますが、日本酒のアルコール度数は平均15度前後、ワインは12~13度ほどのものが中心です。日本酒の方がアルコール度数が高いのは、使用する酵母の違いによるものです。
アルコール度数が一定以上になると、酵母は死滅していき、活動が止まって発酵の進みも遅くなります。どれくらいのアルコールに耐えられるかは酵母の種類によって異なります。日本酒ではよりアルコールに強い酵母を使用するため、ワインと比較してアルコール度数が高くなるのです。
飲み方の違い
日本酒は、冷ややぬる燗、熱燗など幅広い温度帯で楽しめるお酒です。温度によって味わいや香りの感じ方も異なり、同じ日本酒でもさまざまな楽しみ方があります。
一方ワインは、赤ワインは常温、白ワインは冷やして飲みます。近年ではシナモンやクローブなどの香辛料を加えて温めて飲むホットワインも流行ってきていますが、一般的には上記のおいしく感じられる適温で飲まれることが多いです。
日本酒とワインの意外な共通点とは
さまざまな違いのある日本酒とワインですが、意外な共通点も多くあります。
まず、日本酒とワインはどちらも「醸造酒」に分類されます。醸造酒とは、原料に含まれる糖をアルコール発酵させてそのまま飲むお酒のことです。醸造酒を蒸留して造られるのが「蒸留酒」、醸造酒や蒸留酒を加工して造られるのが「混成酒」で、3つの中でも醸造酒は最も古い歴史を持ちます。日本酒とワインは、料理とのペアリングを楽しめることも共通点です。
また日本酒は原料であるお米由来のふくよかな旨みと香りを楽しめるものが多いですが、中にはワインのようにフルーティーなものもあります。「吟醸酒」と呼ばれる日本酒は、製造工程の中で酵母によってフルーティーな香りが生み出されます。メロンやバナナ、リンゴのように甘くてさわやかな香りです。
日本酒とワインをより深く理解して楽しもう
今回は、日本酒とワインの違い、共通点についてご紹介しました。原料やアルコール発酵の方法、飲む温度帯などさまざまな違いのある日本酒とワイン。どちらも長い歴史を持ち、人々に愛されてきたお酒です。両者の性質について知ることで、もっとお酒の世界を楽しめるようになるでしょう。