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日本酒の「樽酒」とは?独特な魅力に迫る


お正月や結婚式、パーティーなどで目にする樽酒の鏡開き。日本では古くから、お祝いの席で鏡開きが行われてきました。

しかし日常ではあまり目にする機会はなく、どのようなものなのか詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、樽酒どのようなものなのか、その歴史と特徴、魅力についてご紹介します。

 

樽酒とは

樽酒と表示して販売するには、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」において、「樽酒の用語は、木製の樽で貯蔵し、木香のついた清酒(瓶その他の容器に詰め替えたものを含む。)である場合に表示できるものとする。」との要件が定められています。

つまり樽酒とは、日本酒をヒノキや杉の樽に入れて貯蔵し、ほのかに木の香りをつけたものを指します。そのため瓶やカップ、紙パックに詰められた日本酒であっても、一度木の樽に貯蔵して木の香りがついたものは「樽酒」として表示されます。

樽で貯蔵する期間は、214日ほどが目安です。長く樽で貯蔵しすぎると木の香りが強くなりすぎて、日本酒本来の香りが損なわれてしまいます。気温や湿度などを考慮して、日本酒の香りと木の香りの両方が活きるように貯蔵する期間が調整されます。

樽のサイズは決まっておらず、大小さまざまなものがあります。一般的なものは、縦、横、高さ各40cm程度で18リットル入りの1斗、縦、横、高さ各50cm程度で36リットル入りの2斗、縦、横、高さ各65cm程度で72リットル入りの4斗です。中には容量を少なくして見かけを大きくするため、上げ底している樽もあります。

 

樽酒の歴史

樽酒の歴史は、日本酒が広く普及した江戸時代にまで遡ります。江戸時代において、すべてのお酒は「樽酒」でした。その理由は、樽がお酒を運ぶ容器として使われていたためです。樽酒に使われる木製の樽は「結樽(ゆいたる)」と呼ばれ、お酒だけでなく、農業や鉱業、一般の生活用など幅広い場面で使われていました。

江戸時代には北前船や樽廻船などの舟運が盛んになり、樽に詰めたお酒を舟で何日もかけて運びました。そして樽に入ったまま取引され、庶民にも広く浸透していきました。

 

樽酒を開ける「鏡開き」の文化

樽酒を木槌で割って開ける儀式は「鏡開き」と呼ばれ、お正月や結婚式、パーティーといったお祝いごとの席でよく行われます。その由来には諸説あり、樽酒の丸い蓋が鏡に似ていることから「鏡開き」と呼ばれるようになったという説もあります。

蓋を割り開くことから「これからの運が開ける」という意味が込められており、縁起の良いお酒として古くから振る舞われてきました。また大きな樽酒を皆で分け合って飲むことから、「幸せを分かち合う」という意味も持ちます。まさにお祝い事や新たな門出の場にふさわしいお酒です。

 

樽酒の特徴と魅力

樽酒の最大の特徴は、木の香りです。樽に貯蔵することで、日本酒が持つ本来の香りに木の香りが合わさり、樽酒独特の清々しい香りが生まれます。特に杉樽で貯蔵した日本酒は、すっきりと爽やかな杉の香りと、杉の香りにより引き締められた日本酒の味わいを楽しめます。また樽で寝かせることで、まろやかさとコクが増し、口当たりのよい味わいになるとも言われています。

 

日本のおめでたい席を盛り上げてきた「樽酒」の魅力

今回は、樽酒どのようなものなのか、その歴史と特徴、魅力についてご紹介しました。日本酒を木の樽に入れて貯蔵することで、日本酒本来の香りと木の香りから生まれる清々しい味わいを楽しめる樽酒。樽酒を木槌で割って開ける「鏡開き」には、「運を開く」「幸せを分かち合う」などの意味合いがあり、おめでたい席にはぴったりの縁起の良いお酒です。