普段何気なく口にしているビールが、どうやって造られているか知っていますか?近年ではクラフトビールの流行もあり、バリエーション豊富なビールを見かけるようになりましたが、基本的な作り方はどれも同じです。今回は、ビールの製造工程を分かりやすく解説していきます。
製麦(せいばく)
ビールづくりは、ビールの原料である麦を発芽させて麦芽を作り出す「製麦」から始まります。収穫したばかりの麦は、発芽していない休眠状態です。そのためまずは水に浸漬する「浸麦」を行い、生育に必要な水分を麦に吸収させます。この間に水は何度か取り換え、酸素を与えます。また麦の表面についたほこりを洗い流したり、麦に含まれる雑味成分を水に溶かしたりして、発芽の準備を整えます。
次に発芽室へと移し、冷風を送りながら発芽を促します。麦を発芽させることにより、デンプンやタンパク質を分解する酵素を作ったり、大麦の成分を分解しやすい状態にしたりします。発芽すると、硬かった麦も指で潰せるくらいに柔らかくなります。
発芽が終わると、長期保存できるように熱風で乾燥する「焙燥」という工程に入ります。この工程により、ビールの色や香りが左右されます。焙燥後には、苦み成分の素である伸びた根っこを取り除きます。
仕込み
次に行われるのが、麦汁を作る「仕込み」という工程です。製麦した麦芽を細かく粉砕し、でんぷんを糖化しやすくします。ここで細かくしすぎると濾過しにくくなる上、麦の表面に含まれるタンニンなどの苦味成分が麦汁に溶けだしやすくなるため注意が必要です。
砕いた麦とお湯を混ぜ、かく拌しながら適度な温度に保つことで、麦を「マイシェ」と呼ばれるおかゆ状にしていきます。マイシェを約65℃に維持することで、麦芽に含まれるデンプンが酵素によって糖に分解される「糖化」が進みます。徐々に透き通ったサラサラの状態へと変化し、最後にろ過することで「麦汁」と呼ばれるクリアな液体になります。ここにホップを加えてさらに煮沸し、香りや苦味を加えていきます。
発酵
麦汁からホップのカスを取り除いて冷却し、発酵タンクに入れます。ここに酵母を加え、 デンプンから分解された糖からビール特有のアルコールと炭酸ガスを作り出す工程が「発酵」です。酵母量が少ないと発酵が遅れて香味のバランスが悪くなり、多すぎるとビールの味が損なわれてしまうため、とても繊細な作業です。温度や発酵時間はビールのスタイルによって異なります。
熟成
発酵が済むと「若ビール」という状態になりますが、まだ味や香りはビールと呼ぶには不十分です。また、ビールにとって好ましくない未熟な臭いが残っています。この臭いを取り除き、まとまりのある味に仕上げていくために重要なのが「熟成」です。
若ビールを貯蔵タンクへと移し、数日から数十日間かけて熟成します。熟成中も残った糖分などから発酵が進み、炭酸ガスが発生します。この炭酸ガスが、ビール特有の爽快な喉越しや発泡性を作り出し、未熟な臭いも揮散させてくれます。
熟成が終わったら熱処理やろ過を行い、不純物や固形物を除去することで、透きとおった琥珀色のビールができあがります。最近ではあえてろ過を行わない「無濾過ビール」や、熱処理を行わない「生ビール」も登場しています。完成したビールは、缶や瓶、樽などの容器に詰められて出荷され、私たちのもとへと届きます。
奥の深いビールの世界
今回は、ビールの製造工程についてご紹介しました。製麦や仕込み、発酵、熟成……と、長く繊細な工程を経て作られるビール。ビールができるまでの道のりを知ることで、手元にあるビールがより一層おいしく感じられるでしょう。