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旬の味を楽しむ。日本酒の四季とそれぞれの特徴


春夏秋冬、季節の移ろいとともにさまざまな景観や旬の食材を楽しめるのは、日本の大きな魅力です。日本酒も季節に合わせて製造が行われ、四季で異なる味わいの”旬”があります。日本酒の四季を理解することで、よりその季節の楽しみが増えるでしょう。そこで今回は、日本酒の四季とそれぞれの特徴についてご紹介します。

冬酒(しぼりたて新酒)

日本酒造りが始まるのは、一般的に原料となる米の収穫が終わった後。毎年冬が近づく10月に入ったころから、春になる3月ごろまでにかけて日本酒が造られます。そのため7月1日から翌6月30日までが日本酒の「年度」であり、年度内に造られて出荷された日本酒は「新酒」と呼ばれます。冬から春にかけてが新酒のオンシーズンです。

通常、日本酒は保存期間を延ばすために2回火入れしてから出荷されます。しかし冬季にできる日本酒は「しぼりたて」と呼ばれ、一度も火入れせずに出荷されます。できあがったばかりの日本酒は、初々しくフレッシュな味わいで、シュワシュワとした発泡感を感じられるものもあります。「しぼりたて」は火入れをしていないため酵母がまだ生きており、冷蔵庫で保管しているとまろやかさが増していきます。

「しぼりたて」の中でも、搾り出されたタイミングにより「あらばしり」「中取り」「責め」とさらに分類されます。「あらばしり」は、お酒を搾ってすぐの部分。フレッシュな香りと切れの良い味わいが魅力です。「中取り」は、あらばしりの次に出てくる透明な部分。味と香りのバランスが優れており、すっきり飲みやすいのが特徴です。最後に出てくるのが「責め」。アルコール度数が高く、濃厚な味わいを楽しめます。

春酒

「春酒」とは、3月中旬から5月中旬にかけて販売される春限定の日本酒を指します。古くから桜を愛でながらお酒を飲む文化がある日本。春酒は「花見酒」とも呼ばれ、お花見の席で楽しまれています。春酒は冬に絞られたもので、上品な甘みと軽くて飲みやすい味わいが特徴です。

春酒には、春らしいピンク色や桜をモチーフにしたものも多くあります。中には、酵母を使って日本酒自体を桃色に仕上げたにごり酒も。華やかな見た目にも気分が上がります。

夏酒

温度や光の影響を受けやすい日本酒は、もともと夏はオフシーズンとされてきました。しかし近年では、各蔵元や酒屋さんが趣向を凝らしたさまざまな「夏酒」が登場しています。

夏酒には決まった定義はありませんが、白ワインのようなスッキリした味わいの夏酒や、生タイプのフレッシュな味わいな夏酒、ロックで飲む生原酒など、バリエーション豊かでどれも夏に飲みたくなるものばかり。飽きることなく夏酒を楽しめます。淡いブルーの日本酒もあり、グラスに注げば見た目も涼し気です。

秋酒(ひやおろし・秋あがり)

日本酒は、できあがった後に貯造タンク内で保管している間にも熟成が進み、味わいが変化していきます。秋に販売されるのは、春夏を涼しい蔵で過ごし味わい深くなった秋酒。”食欲の秋”は旬を迎える食材も多く、日本酒と合わせて楽しめます。

秋酒といえば「ひやおろし」と「秋あがり」。ひやおろしは、冷蔵設備のない江戸時代の造り方を継承した日本酒です。春に搾った酒を秋まで貯蔵して、通常2度する火入れを1度だけ行い、「冷や」のまま卸します。熟成されており、まろやかで旨みのある味わいが魅力です。対して秋あがりは、火入れを2回行った秋酒のことを指します。

四季折々の日本酒を味わって

今回は、日本酒の四季とそれぞれの特徴についてご紹介しました。冬や春にはできあがったばかりのフレッシュな味わいを、夏や秋には熟成が進んだまろやかな味わいを楽しむなど、四季折々で楽しめるのも日本酒の魅力のひとつ。

京仕込キンシ正宗では、創醸天明元年(1781年)より京都の水と酒米、そして麹造りにとことんこだわった酒造りを続けています。ぜひ季節ごとの日本酒を飲み比べて、日本の四季を味わってみてください。