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日本酒の「春酒」とは?この季節ならではのやさしい味わいを堪能しよう


立春を迎えて厳しい寒さも徐々に和らぎ、暦の上では春を迎えました。

日本酒は一年を通しておいしく楽しめるお酒ですが、多くの酒造では季節ごとにさまざまな日本酒を販売しています。

秋はまろやかな「ひやおろし」、冬はフレッシュな「新酒」、そして春の訪れを感じるこの時期には新鮮な味わいの「春酒」が市場に出回ります。

今回は、春酒の特徴や古くから続く春の日本酒の文化、春酒の楽しみ方についてご紹介します。

 

春酒とは

春酒とは、秋に仕込んだ日本酒が熟成されて、3月中旬から5月中旬にかけて販売される春限定の日本酒です。

春酒はほのかな甘みのあるすっきりとした味わいで、華やかな香りを感じられるものが多いです。

比較的アルコール度数が低く、軽やかな口当たりを楽しめます。桃色のボトルや桜をモチーフにしたラベルなど華やかなデザインの商品も多く、視覚的にも春を感じられます。

また、桜の酵母で醸した日本酒もあります。酵母は日本酒の醸造には欠かせない存在で、アルコールの発酵を促し、日本酒の香りや味わいに大きな影響を与えます。

近年では、自然界の花から分離された清酒酵母である「花酵母」を使用した日本酒も増えています。ナデシコやベゴニア、ヒマワリ、コスモスなどさまざまな種類の花酵母があり、桜酵母もそのひとつです。

芳醇で上品な香りとすっきりとした口当たりが特徴です。

 

古くから続く春の日本酒の文化

日本では古くから桜を愛でながらお酒を飲むお花見文化があり、春の風物詩となっています。このことから、春酒は「花見酒」とも呼ばれます。

お花見文化の始まりは奈良時代にまで遡ります。当時はお花見と言えば梅が主流で、中国から伝来した梅の花を貴族が鑑賞していたと言われています。

その後平安時代に入ると、日本人にとって神聖な木であった「桜」がお花見の主流となりました。平安時代中期には、「源氏物語」で桜の下で宴をする様子が描かれています。

桜を眺めながらお酒を飲んで盛り上がる現代のお花見スタイルが確立されたきっかけは、豊臣秀吉が1598年に京都の醍醐寺で行った「醍醐の花見」だと言われています。

700本の桜を畿内から醍醐寺に集めて移植し、その桜の木の下で全国から集められた名酒が飲み交わされました。

 

春酒の楽しみ方

春酒の魅力をより堪能するためには、どのように飲むのが良いのでしょうか。ここでは、春酒の楽しみ方をご紹介します。 

春が旬の食材と合わせる

うど、ふき、ふきのとう、タラの芽、ワラビ、タケノコなど、春には多くの山菜が収穫されます。春に旬を迎える山菜や野菜には、独特の苦味やえぐみを持つものが多くあります。

春酒は、これらの食材と相性抜群です。春酒はすっきりとした辛口で酸味を感じられるものが多い傾向があり、軽やかな飲み心地で春の食材の苦味を包み込んでくれます。 

冷やして飲む

日本酒はさまざまな温度帯で楽しめるお酒ですが、春酒は冷やして飲むのがおすすめです。

冷蔵庫でほどよく冷やすことで、フルーティーな香りが引き立ち、すっきりとした新鮮な味わいを堪能できます。甘みや酸味をより感じたい方は、あえて温めて飲むのも良いでしょう。

お花見で楽しむ

春の陽気の中、桜を眺めながら飲む春酒は格別の味わいです。

お花見では屋外で長時間過ごすことになるため、常温でもおいしく飲める純米酒がおすすめです。

春酒は揚げ物の香ばしい香りやサクサクとした食感との相性も良いため、たけのこやうどなど山菜の天ぷら、唐揚げなどをお花見弁当にしてお酒とともに楽しむと良いでしょう。

 

「春酒」で春の訪れを感じよう

今回は、春酒の特徴や古くから続く春の日本酒の文化、春酒の楽しみ方についてご紹介しました。

出会いと別れ、新たな始まりの季節である春。ほんのり甘くて軽やかな春酒は、1人でじっくり味わうのも良いですが、花見酒で新たに出会った人たちとの仲を深めるきっかけにもなります。

味わいからも見た目からも春を感じられる、この季節ならではの春酒を楽しんでみてください。