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日本酒の味を決める「酒米」とは?種類と特徴を解説


お米と水を主な原料として作られる日本酒。日本酒のラベルを見ると、使われた酒米の種類が書いてあります。日本酒には私たちが普段口にするようなお米が使用されることもありますが、日本酒造りに適した「酒米」を使うのが理想とされています。今回は、日本酒の味を決める「酒米」とはどういうものか、代表的な種類と特徴をご紹介します。

酒米(さかまい)とは?

「酒米」とは、日本酒を作る際に使われる白米の総称を指します。酒米は、普段私たちが白米として食べる食用米とは、種類や求められる特徴が大きく異なるものです。酒米の中でも特に日本酒造りに適したものは「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」と呼ばれ、現在100種類以上が登録されています。単に酒米全般を酒造好適米と呼ぶこともあります。

酒米の特徴

酒米はおいしい日本酒になるために、明確な条件があります。特に重要な条件は下記の3つです。

・たんぱく質や脂質が少ない
・粒の大きさ
・心白(しんぱく)の割合

お米の表層部に含まれているタンパク質や脂質は、白米として食べる際は旨味や栄養素の役割を果たします。しかし日本酒を作る上では、タンパク質が多いと麹菌や酵母の生育が早まり、バランスが崩れて雑味の原因となります。また脂質は、日本酒特有の香りの成分を妨げてしまいます。そのため、タンパク質や脂質が少ないお米の方が日本酒造りには向いています。

粒の大きさはある程度大きく、丈夫であることが求められます。日本酒は、精米歩合によって味わいが大きく変化します。精米歩合とは、玄米から表層部を削って精米し、残った米の割合を%で表したものです。例えば精米歩合が60%の日本酒だと、玄米から表層部を40%削った状態の酒米を使用して作られたことになります。

お米のタンパク質や脂質は、表層部に多く含まれます。そのため食用米の精米歩合は平均で90%ほどですが、日本酒を作る上では精米歩合が75%以下の白米が使用されることが多いです。どれだけ精米できるかによって日本酒のおいしさが異なってくるため、精米した際に米の粒が砕けないようある程度の大きさが必要となります。

また、米の粒の内側にある白くて不透明な部分である「心白」も大きい方が日本酒に適しています。心白には粘性が強い性質があり、心白が大きいほど米粒は割れにくく丈夫になります。さらに心白は吸水性が良く、醪に溶けやすい性質もあります。

酒米が育つ環境

酒米を育てるには、以下のような厳しい条件を持った環境が必要とされています。

・一日の寒暖の差が大きい
・十分な栄養を含んだ土壌である
・十分に稲と稲の間隔を空ける

食用米よりも厳しい条件下で栽培する必要があるため、食用米よりも高価な傾向があります。

酒米の種類

白米にもさまざまな種類がありそれぞれ味わいが異なるように、酒米も非常に多岐にわたります。ここでは、代表的な酒米とその特徴をご紹介します。

山田錦(やまだにしき)

山田錦は、「酒米の王様」とも呼ばれ最も多く用いられている酒米です。主に兵庫県で栽培されており、「山田穂」と「短稈渡船」の交配により生まれました。粒が大きく、約8割が心白である点が大きな特徴です。タンパク質の含有量が少なく、吸水性が高くて醪にしやすいため、酒米として理想的な条件を兼ね備えています。

雄町(おまち)

雄町は江戸時代に生まれた酒米で、酒米としては日本最古の品種とされています。現存する酒米の半数以上は雄町の遺伝子を受け継いでいると言われています。主に岡山県で栽培され、生産量は酒米全体の約2%程度と少なめですが、米の旨味や甘味を感じさせる立体的な味わいの日本酒に熱狂的なファンも多く存在します。

五百万石(ごひゃくまんごく)

五百万石は山田錦と並ぶ知名度を誇る酒米です。米どころである新潟県で気候風土に合うよう開発され、現在では北陸地方を中心に栽培されています。適度な弾力性がある外硬内軟の理想的な蒸米となり、米麹を作りやすいのが特徴です。キレががよくスッキリとしていて、クセが少ない日本酒となります。

美山錦(みやまにしき)

美山錦は、「たかね錦」の突然変異によって長野県で生まれた、酒米としては比較的新しい品種です。現在では山田錦、五百万石に次ぐ生産量を誇ります。寒冷地や山間部での栽培に適しており、現在では東北地方を中心に広く栽培されています。滑らかですっきりとした味わいの日本酒となるのが特徴です。

酒米を知ると日本酒選びがもっと楽しく

今回は、日本酒の味を決める「酒米」とはどういうものか、代表的な種類と特徴をご紹介しました。よりおいしい日本酒を作るために、日本では酒米の品種改良が重ねられてきました。酒米によって日本酒の味わいは大きく異なるため、酒米の種類や特徴を知ることで好みの日本酒に出会いやすくなるでしょう。

京仕込キンシ正宗では、創醸天明元年(1781年)より京都の水と酒米、そして麹造りにとことんこだわった酒造りを続けています。普段の晩酌から特別な日まで、ぜひ格別な日本酒を楽しんでみてください。