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日本酒のよくない香り「オフフレーバー」とは。主な香りと原因を解説


香りは、日本酒の魅力のひとつ。原料の米を思わせるふくよかな香りや、華やかでフルーティーな香りなど、多種多様な香りが日本酒の味わいに華を添えてくれます。

しかし、劣化したり保存環境が悪かったりすると、本来の日本酒の香りとは異なる不快な匂いを発することもあります。

今回は、「オフフレーバー」と呼ばれる日本酒のよくない香りの、主な種類と原因についてご紹介します。

オフフレーバーとは

食品や飲料を口にするとき、いつもと違う異臭や味がすると不快に感じますよね。

オフフレーバーはこのような、食品や飲料において本来持つべき風味とは異なるにおいや味のことを指します。

日本酒でも、品質を評価するためにさまざまなオフフレーバーが定義されてきました。日本酒を飲んで「おいしくない」と感じるときは、何かしらのオフフレーバーが影響しているのかもしれません。

しかし、かつてはオフフレーバーと定義されてきた香りでも、最近では個性と捉えられることもあります。人の嗜好が変化して日本酒が多様化すると共に、オフフレーバーの定義も変化しています。

 

日本酒の主なオフフレーバー

では、日本酒の主なオフフレーバーにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、原因別に主なオフフレーバーをご紹介します。

保存環境によって生まれるにおい

保存環境によって生まれるオフフレーバーには、以下のようなものがあります。

 

漬物のようなにおい「老ね香」

老ね香は、日本酒を高温で保存することで、過度に熟成して生まれる代表的なオフフレーバーです。

漬物を連想させるDMTS(ジメチルトリスルフィド)、にんにくのような硫黄臭を持つDMDS(ジメチルジスルフィド)という物質が原因です。

ナッツのようなにおい「生老ね香」

生老ね香は、火入れをしていない生酒を保存した場合に発生する蒸れたような香りです。

老ね香も生老ね香も、低温で保存することにより発生を抑えることができます。

獣のようなにおい「日光臭」

日光臭は、太陽光や紫外線に晒されることで生じます。

日本酒は紫外線を浴びると、日光臭を発するだけでなく、色も黄色や茶色に変化して劣化するため注意が必要です。

 

製造工程が原因で生まれるにおい

製造工程によって生まれるオフフレーバーには、以下のようなものがあります。

青臭く刺激的なにおい

青臭く刺激的なにおいは、酵母が糖をアルコールに変える働きの途中で生成される成分「アセトアルデヒド」によるものです。「お歯黒臭」「木香様臭」とも呼ばれます。

 木香や草木、青竹のような青臭さで、ごく少量であれば青りんごを彷彿とさせる爽やかな香りと捉えられることもあります。

醪にアルコール添加した場合に生成されやすいため、アルコール添加を行わない純米酒では発生しにくいにおいです。

ヨーグルトのようなにおい

「つわり香」とも呼ばれるヨーグルトや乳酸菌飲料のようなにおいは、「ジアセチル」という成分が原因で発生します。

上槽のタイミングが早すぎると、大量に残っているα-アセト乳酸が酸化されジアセチルが発生します。

火落ち菌という細菌によって生成されることもあります。

燻製のようなにおい

燻製のようなにおいは、「4VG」という成分が原因で発生します。

ワインやビールにおいては酵母で4VGが作られることがあるため、必ずしもオフフレーバーと見なされません。

日本酒を造る清酒酵母には4VGを作る遺伝子はなく、麹の汚染が原因となり生まれます。

製造環境によって付着するにおい「環境臭」

酒造りに使われる資材に臭いが移り、オフフレーバーとなることもあります。

たとえば新しい搾り袋を使って上槽したり、新しいホースを使って酒を移動させたりすることで、樹脂(プラスチック)臭、カビ臭、ゴム臭などの臭いが出る場合があります。

 

奥深い日本酒の香りの世界

今回は、「オフフレーバー」と呼ばれる日本酒のよくない香りの、主な種類と原因についてご紹介しました。

オフフレーバーが発生しないようにするためには、保管環境が重要です。

温度管理と紫外線に注意して、日本酒本来の味わいや香りを損ねないようにしましょう。