世界には数えきれないほどたくさんの種類のお酒があり、それぞれ造り方も大きく異なります。
日本の伝統的なお酒である日本酒は、「並行複発酵」という発酵方法で造られます。
並行複発酵は、ほかのお酒ではあまり見られない珍しい発酵方法です。
今回は、お酒の発酵方法の種類や、並行複発酵の特徴、日本酒以外の並行複発酵で作られるお酒についてご紹介します。
お酒の発酵方法
お酒の製造工程で行われる発酵には、大きく分けて以下の3つの方法があります。
・単発酵
・並行複発酵
・単行複発酵
ここでは、それぞれについて簡単に解説していきます。
単発酵
単発酵とは、アルコール発酵の原料となるグルコースを多く含む原料を用いた発酵形式です。もともと糖分が豊富にあるため、デンプンを糖分に分解する作業は必要ありません。
酵母を加えることで、酵母が原料の糖分を食べてアルコールと炭酸ガスを排出します。発酵の過程が単純なため、原料の品質がそのまま味に反映されます。
単発酵で造られる代表的なお酒は、ブドウ糖を豊富に含むブドウの絞り汁を発酵させるワインです。そのほか、果実酒や蜂蜜酒などの単発酵で造られます。
単行複発酵
単行複発酵とは、原料に含まれるデンプンを糖分に分解し、その後酵母を加えてアルコール発酵させる発酵形式です。
デンプンだけではアルコール発酵することができないため、糖分を分解する「糖化」と呼ばれる作業が必要になります。糖化と発酵の2つの工程は、別のタンクで行われます。
単行複発酵で造られる代表的なお酒には、ビールがあります。ビールの原料である麦には糖分があまり含まれないため、そのままではお酒を造ることができません。
そこで麦芽を加えることで麦のデンプンを糖化させ、できた麦汁に酵母を加えて発酵させます。
並行複発酵
並行複発酵は、単行複発酵と同じく、糖化と発酵の2つの工程が行われます。単行複発酵との違いは、糖化と発酵の工程を1つのタンクで同時に行うことです。
並行複発酵で造られる代表的なお酒が、日本酒です。日本酒の原料であるお米には糖分がないため、米麹を加えて、アミラーゼという酵母の力でお米に含まれるデンプンを糖化します。
日本酒ならではの「並行複発酵」の魅力とは?
並行複発酵は、世界でも珍しい発酵方法です。大きな魅力は、発酵の効率が良く、糖分が低い割にアルコール度数の高いお酒ができあがることです。
糖化するのと同時に、糖化で発生した糖分を利用してアルコール発酵が進むため、ほかの発酵形式と比べると効率よく発酵できます。日本酒では、発酵直後の段階で20度近くのアルコール度数となります。
またワインのように単発酵で造られるお酒は、原料の質がお酒の仕上がりを大きく左右しますが、並行複発酵では原料の質の影響を受けにくいです。
気温や湿度などによって繊細な管理は必要ですが、お米が不作の年でも醸造技術さえあれば上質な日本酒を造ることができます
海外にもある!並行複発酵で造られるお酒
並行複発酵を使用してできるお酒は、実は日本酒以外にも存在します。並行複発酵は、主に東アジアで用いられる発酵形式です。
日本では、泡盛や焼酎などが並行複発酵で造られています。海外ではそのほかにも、フィリピンの山岳地帯でお米を原料に造られる「ブボッド」、中国浙江省紹興市で穀類や果実類を原料に造られる「紹興酒」、韓国で主にお米を原料に造られる「マッコリ」などがあります。
並行複発酵で造られる日本酒の味わいを堪能しよう
今回は、お酒の発酵方法の種類や、並行複発酵の特徴、日本酒以外の並行複発酵で作られるお酒についてご紹介しました。
酒造りの業界でも技術が発展し機械化が進んでいますが、並行複発酵は繊細な管理を必要とする発酵方法です。
ぜひこの機会に、並行複発酵で造られた上質な日本酒の味わいをぜひ楽しんでみてください。