ビール造りにおいて、最も重要な原料である麦。麦と一口にいっても様々な種類がありますが、ビール造りには主に「大麦」が使われます。
では、なぜ大麦がビールに使われるのでしょうか。
今回は、大麦とはどのようなものなのか、種類による味わいの違いや小麦との違いなどについてご紹介します。
ビールの原料「大麦」とは
そもそも「麦」とは、大麦、小麦、ライ麦、エン麦など、外見の類似するイネ科穀物やその子実の総称です。古くから栽培され、食用や飼料として広く活用されてきました。
その中でビール造りに多く使われるのが「大麦」です。大麦は約1万年前に西南アジアで栽培が始められ、古代エジプトからヨーロッパ、インド、中国へと広まりました。現代でも食物繊維にすぐれた健康食として、世界各国で食べられています。
では、なぜ大麦がビール造りに使われるようになったのでしょうか。大きな理由のひとつは、穀粒が大きく均一で加工しやすいことです。またでんぷんの含有量が多く、発芽力や酵素力も優れています。ビール以外にも、麦焼酎やウイスキーの原料としても使われています。
麦芽の種類による味わいの違い
ビール造りでは、大麦を発芽させ、乾燥させることにより麦芽をつくる「製麦(せいばく)」という工程があります。
発芽した麦は生育を止めるために乾燥させ、ロースターで加熱して焙煎します。この焙煎の度合いによって異なる種類の麦芽ができあがり、どの麦芽をどのくらいブレンドするかによって、多種多様な色と味わいのビールが生まれます。
比較的穏やかな温度で焙煎した「淡色麦芽(ペールモルト)」を使うと、「ピルスナー」や「ケルシュ」、「アメリカンラガー」など淡い黄色のビールになります。
日本でお馴染みのビールも、淡色麦芽を使用したものが多いです。麦芽由来の豊かな香りを感じられ、すっきりとした穏やかな味わいが特徴です。
一部に焙煎した麦芽を使用すると、「ブラウンエール」「デュンケル」「ダークラガー」など、褐色から銅色に色付いたビールになります。
超高温で焙煎した「カラメル麦芽」や、さらに熱風で乾燥させた「クリスタル麦芽」を使用したビールは、カラメルのような香ばしい香りと麦由来の甘味、コクを感じられます。
段階的に熱入れをせず、一気にローストして炭のような状態にした「黒麦芽」を使用すると、「ポーター」、「スタウト」「シュバルツ」など黒い見た目のビールになります。焦げたようなスモーキーな風味が特徴です。
小麦と大麦の違いは
パンやうどん、パスタなど幅広い食品の原料としてお馴染みの小麦ですが、同じ麦でも大麦とは全く別物です。最大の違いは、それぞれに含まれるたんぱく質の量です。
小麦を使った食品は、もちもち、ふっくらとした食感のものが多くあります。これは、グルテンというたんぱく質が豊富に含まれているためです。
対して大麦にはグルテンは含まれず、主に「グルテニン」と「ホルデイン」という2種類のたんぱく質が含まれます。グルテンのように水を加えてこねても粘り気や弾力性は出てきませんが、吸水性に優れています。
小麦には胚を守る穀皮がなく、精麦の際に壊れやすいためビールづくりには不向きです。しかし、中には小麦を原料としたビールもあります。ドイツのバイエルン地方発祥の「ヴァイツェン」もそのひとつです。
小麦は大麦よりもたんぱく質を多く含むことから、ビールが濁りやすく、くすみがかった白っぽい色になる傾向があります。また泡持ちが良く、苦味の少ないフルーティーな味わいが特徴です。
ビールの色合いと味わいを左右する麦
今回は、大麦とはどのようなものなのか、種類による味わいの違いや小麦との違いなどについてご紹介しました。
麦は、ビールの色合いや味わいを左右するとても重要な原料です。麦芽の種類によって、多種多様なビールの個性が生み出されます。
好みのビールを見つけるには、原料である麦に注目してみるのも面白いです。