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クラフトビールと地ビールはどう違う?それぞれの特徴と歴史を紐解く


近年よく見かけるようになったクラフトビール。専門店だけでなくスーパーやコンビニでもバリエーション豊かなクラフトビールが並び、その個性的なパッケージや味わいでますます人気が高まっています。

同じく耳にする機会の多い「地ビール」と混同されがちですが、どのような違いがあるのでしょうか。今回は地ビールとクラフトビールそれぞれの歴史を紐解きながら、双方の違いと特徴を見ていきましょう。

 

クラフトビールと地ビールの違いは?

地ビールとクラフトビールは、実はどちらも「小規模の醸造所で作られたビール」であり、基本的には大きな違いはありません。

地ビールは、1994年の酒税法改正によって小さな工場や工房で醸造されるようになり、各地でブームとなります。クラフトビールという言葉が日本で広まったのは、アメリカでのクラフトビールの人気にあやかり、再びブームが到来した際です。

アメリカのクラフトビール組合では、以下の3つをクラフトビールの定義として掲げています。

・生産量が年間600万バレル(70万2000キロリットル)以下の小規模であること
・独立していること
・香りが伝統的であり、革新的な原材料や発酵方法で造られていること

全国地ビール醸造者協議会でもこれに倣い、大手メーカーから独立してビールづくりを実施していることや、1回の麦汁製造量が20キロリットル以下で醸造者の目の届く製造をしていること、伝統的な製法で製造されていることなどを日本におけるクラフトビールの定義としています。

しかし大手ビールメーカーが造るクラフトビールは、これらの定義に当てはまらないこともあります。

 

クラフトビールと地ビールの歴史

クラフトビールと地ビールという2つの言葉が生まれた理由には、それぞれの歴史が関係しています。

地ビールの誕生

地ビールが造られるようになったきっかけは、1994年に行われた酒税法の改正です。改正前の酒税法では、ビールの製造免許を取得するために年間で最低2,000キロリットル以上製造するよう厳しく規制されていました。

そのためビールの醸造ができるのは、大手メーカーに限られていました。

改正により最低年間製造量が60キロリットルへと引き下げられると、小規模の醸造所でもビール醸造が可能となります。

このタイミングで全国各地に小規模の醸造所が設立され、地ビールブームが巻き起こりました。当初は地域活性や町おこしを目的としてビールが造られることが多く、日本酒の「地酒」にならって「地ビール」と呼ばれるようになりました。

地ビールブームの衰退

ブームの勢いに乗り数多くの醸造所ができたものの、中にはビール醸造の十分なノウハウを持たないままビールを造る醸造所もありました。

またその土地ならではの素材や製法を用いて造られた地ビールは、観光地のお土産として利用されることが多く、おいしさや品質が二の次になってしまいがちでした。

こうした問題点から、1997年ごろから地ビールブームの勢いは衰えていきます。

クラフトビールがブームに

地ビールブームの勢いが衰えた後も、一部の醸造所では個性や品質を追及しながら地ビールの製造が続けられました。

こうした努力により醸造技術が向上し、品質に重きを置いた個性的なビールが少量生産されます。これらのビールは地域に根づいた「地ビール」と差別化し、職人技からなる「手工芸品(クラフト)」にたとえられて「クラフトビール」と呼ばれるようになりました。

アメリカでもクラフトビールがブームとなっており、その人気にあやかり日本でも2011年頃から再びブームが到来します。

 

個性豊かなクラフトビールや地ビールを楽しもう

今回は、クラフトビールと地ビールの違いと歴史、それぞれの特徴についてご紹介しました。

クラフトビールの人気の背景には、高い品質とおいしさを追及し続けた小規模醸造所の努力がありました。

味や香りはもちろん、パッケージにもこだわって造られたクラフトビールは、これからますます人気が高まっていくでしょう。